よもやま話
2018年06月29日
 呼吸、姿勢、運動について(1)

 現代人の呼吸は浅く乱れています。科学の進歩に伴いさまざまなことが便利で効率的に行えるようになってきてますが、それで現代人のストレスが減るわけでもなく、むしろ逆にそれに振り回されるように多忙になっているように思えます。生活のリズムや行動様式が昔に比べてスピード化し、気忙しくなっています。

 そういったことが現代人の呼吸の乱れの大きな要因といえます。この呼吸の乱れは心身に悪い影響を及ぼします。ですから、意識的にゆっくり呼吸をする時間をつくり、正しい呼吸法を行い、自然界の清気を体内に取り込みましょう。
 
 呼吸は横隔膜と肋間筋などの働きによる運動です。そう、呼吸もれっきとした運動なのです。呼吸を大別すると、胸式呼吸、腹式呼吸、逆複式呼吸に分けられます。それぞれを簡単に説明しましょう。

 (次回に続く)
2018年06月22日
 養生法とは(3)

 このように、その季節に適した過ごし方をしないと、そのあとの季節の体調にまで影響を及ぼしてしまうということです。

 例えば、若い女性が冬でも短いスカートをはいていたりしますが、こんなことをしてると、体内の陽気が損なわれて、春になっても足の冷えが残るだけでなく、腰痛、月経痛、月経不順などがおこることもあるので気をつけてほしいものです。

 夏は自然界の陽気をたくさん浴びて、しっかり汗もかいて発散することが必要です。もちろん、紫外線対策をして脱水や日射病には気をつけなければいけませんが、ひと夏中、冷房の効いた部屋にばかりいて過ごすのは先ほどの理由からもよくありません。
 
 以上のように、養生法は大切ではありますが、あまり窮屈に考えないようにしてください。そうしなければいけないというふうに思うと、そのこと自体が精神的ストレスになり兼ねませんので。ただ知っておくだけでも意味はあると思います。あなたの生活状況に合わせて、無理なく改善できるところがあれば実践していただければよいでしょう。
2018年06月15日
 養生法とは(2)

 (以下、『意釈黄帝内経素問』(小曽戸丈夫,浜田善利共著)より抜粋)

 『 秋の三か月間を、容平(ようへい)という。(中略)この時にあっては、早く寝て早く起きることが、ちょうど鶏の寝起きのようであるべきだ。志を安らかにして、(中略)。

 (中略)もしこの養生法に従わず、むやみに精神を動揺させたり、あるいは秋の冷えにあたりながら過労したりすると、秋に盛んに活動している肺の臓が傷害されて病となる。たとえすぐには発病しなくても、冬がくると、これが因となって下痢をおこす病となる。それは秋にうけた傷害が元になって、冬の蟄蔵(ちつぞう)の気力が減少する結果、病が表面に出てくることになるのだ。』

*蟄蔵(ちつぞう):潜伏して閉蔵する。

 『 冬の三か月間を、閉蔵(へいぞう)という。(中略)この時にあっては、夜は早く寝、朝は遅くまで床にあって日が昇ってから起き、寒気に損なわれないようにしなければならない。(中略)肉体的には直に寒さにふれぬように、また、体を温かく保つように注意し、(中略)。

 (中略)この養生法に逆らって精神を忙しく動揺させたり、寒にふれたり、過労して発汗し陽気をたびたび逃したりすると、冬の主役である腎の臓が傷害されて発病する。たとえすぐに発病しなくても、春になるとこれが原因となって、手足が萎えて冷える痿厥(いけつ)という病になる。それは冬にうけた傷害が元になって、春の発生の気力が減少した結果、病が表面に出てくるのだ。』

 (次回に続く)
2018年06月08日
 養生法とは(1)

 東洋医学の中には古来より培われた養生法があります。養生法とは、健康を維持・管理して長寿を全うするための方法についての総称です。具体的には、心の持ち方や、飲食、睡眠、運動、衣服など、日常生活全般にわたっての内容が含まれます。いずれも自然の摂理に合ったものですから、私たちも可能な範囲で取り入れて実践していきましょう。

 『素問・四季調神大論』に、私たち現代人にも参考になる四季に応じた過ごし方が書いてあります。(以下、『意釈黄帝内経素問』(小曽戸丈夫,浜田善利共著)より抜粋)

 『 春の三か月間を、発陳(はっちん)という。(中略)この時にあっては、人々は夜ふかしすることなく早く床に入り、朝は早く起き出てゆるやかに庭を歩くようにする。(中略)この養生法に逆らって心を緊張させたり、急激な労働をしたりすると、春に盛んに活動する肝の臓が傷害されて病となる。たとえすぐに発病しなくても、夏がくるとこれが原因となって、夏でも寒がる病となる。即ち、春にうけた傷害が元になって夏の万物成長の気力が減少してくる結果、病が表面に出てくるのだ。』

 『 夏の三か月間を、蕃秀(ばんしゅう)という。(中略)この時にあっては、人びとは夜は夜ふかしすることなく、朝は早く起床し、日の長いのに倦(う)むことがないようにする。(中略)この養生法に逆らって心をうつうつさせたり、身体に鬱熱(うつねつ)させたりすると、夏に盛んに活動する心の臓が傷害されて病となる。たとえすぐに発病しなくても、秋がくるとこれが原因となり、おこりとなる。即ち夏にうけた傷害が元になって秋の収斂(しゅうれん)の気力が減少する結果、病が表面に出てくるのだ。』

*おこり:間欠的に発熱し、悪感(おかん)や震えを発する病気。

 (次回に続く)
2018年06月01日
 東洋医学からみた肩こり(3)

 臓腑経絡の観点からみれば、臓腑から経絡を通して体表の項背部に至るまで、このルートの中のどこかで問題が生じれば、肩こりが生じうるということです。このうち、体表面に近い経絡経筋の問題である場合(例えば、同一姿勢の持続や特定の筋肉の酷使による場合)は、いわば局所(項背部)に対するアプローチで改善が見込めます。例えば、マッサージなどで改善する場合がこれに当たります。

 しかし、臓腑病から経絡に伝播した肩こりや臓腑病そのものによって生じる肩こりの場合には、局部(項背部)に対するアプローチだけでは当然根本解決にならないわけです。仮にマッサージなど局所的にほぐしてその時は楽になっても、根本が治ったわけではないので、再び肩が凝ってきます。その根本原因に対するアプローチが必要となるのです。

 もうひとつ、外因によるものとして、いわゆる風邪をひいたときに、体表面で外邪と正気が戦うことにより、項背部が緊張して生じる肩こりもあります。こういった場合には、例えば葛根湯を飲めば適度に発汗して外邪も追い出すことができて、項背部のこりも消失します。

 以上のように、肩こりの病機(病のしくみ)を主に気血津液、臓腑経絡の観点から紹介しました。そして、体内に生じているその問題点を解決するために有効な養生法をこの後、述べていきます。これらの養生法を実践していくことで、あなたの肩こりは解消されていくはずです。

しかし、中には諸事情で養生法まではなかなかうまく実践できないという人、もっと早く何とかならないかという人もおられるでしょう。そういった人たちには、湯液治療(漢方薬)や鍼灸治療が有効であります。先ほど示したようにその人の病因病機が把握できれば、それぞれに応じた治療ができるわけです。養生法と組み合わせればなお良い結果が得られるでしょう。
2018年05月25日
 東洋医学からみた肩こり(2)

 次に病機(病のしくみ)として、気血津液の観点からみれば、頚部は多数の経絡・経筋が流注しているので、気血(津液)が集約してその上下左右の流れが複雑に交錯する部位といえます。ですから、どこかに流れを乱す要因が生じれば、他の部位より容易に流れの滞りを起こします。

 高速道路で多くの車線が一気に合流する場所では交通渋滞が起こりやすいですよね。人体では、広い背中から幅の狭い頚部に気血の流れが集約してくるわけですから、同様に滞りやすいことはイメージしやすいかと思います。

 また、肩こりのおこる項背部というのは、腹部に対して陽位に属し、体の上部でもあるので下部に対しても陽位に属します。ですから、体内に気滞が生じた場合、その余った気(邪気)は陽に属し、陽である体の上部に集約していくために、項頚部でその流れが滞りやすいと考えられます。

 正気と邪気の状態という観点からみれば、血虚や腎虚などの正気の弱りの状態のときにも、相対的に邪気が旺盛となって流れが滞り、肩こりが生じやすくなるといえます。

2018年05月18日
 東洋医学からみた肩こり(1)

 これまで東洋医学についての基礎知識をざっくりと解説してきました。それを踏まえて、肩こりというものを東洋医学の視点からみればどうなのかをお伝えしていきます。肩こりも含め、そもそも運動器疾患(整形外科的疾患)は臓腑との関わりがあることが多いのです。

 では、肩こりの病因から考えましょう。

 病因としては、まず七情不和が多くみられます。とりわけ、「怒」の感情に由来するものが目立ちます。他には、飲食不節とそれに伴う痰飲や労逸(肉体過労、精神過労、長時間の同一姿勢)などが挙げられます。

 『顔の化学』には、「顔の形」は、遺伝的に決められている形から、その人が常時保っている精神と身体の状況による影響と、顔面骨格に作用する外力の影響により、意外に容易に変化するとし、その理由の一つとして習慣性の身体の使い方の偏りを指摘しています。

そして、習慣性の身体の使い方の偏りを主に三つ挙げています。まとめると、

 1.咀嚼習癖(片側噛みの癖):この習慣を治すには、意識して普段噛まない側の歯で噛む習慣をつけるのと同時に、ガムを使った咀嚼訓練を行うこと。

 2.睡眠姿勢習癖:だいたい右側か左側かどちらかを向いて、つまりどちらかを下にして眠る癖である。これも下になった側の顔面がつぶれ歯並びがゆがむ。ふせ寝では、頭・顎・歯列・脊椎に変形が及ぶ。

 3.口呼吸習癖:口呼吸は多くの疾患をもたらし、特に免疫疾患を引き起こすことがある。

 これらを東洋医学的にみれば、気の偏在(特に左右での気の偏在)から病が生じるといえます。この気の偏在から肩こりが生じてもおかしくないでしょう。したがって、習慣性の身体の使い方の偏りも、肩こりの病因として考えられます。
2018年05月11日
 どういう人が治りにくいのか?(2)

 中国春秋時代末期に伝説的な名医「扁鵲(へんじゃく)」がいたようですが、中国の歴史家「司馬遷(しばせん)」が編纂した中国の歴史書『史記』の中の『列伝』七十巻には『扁鵲倉公列伝』があります。ここに「六不治」という興味深い内容が記載されています。

@「驕恣不論於理,一不治也」
 驕恣(きょうし)理を論ぜざるは、一の不治なり。驕(おご)り高ぶって、道理を無視する人。
[意訳]はたから見れば問題があると思われることでも、自分が正しいと思い込み、医師や他人の忠告やアドバイスを聞き入れない人は、一つの不治である。

A「軽身重財,二不治也」
 身を軽くし財を重くすは、二の不治なり。
[意訳]自分の身体を大事にせずに酷使したり不摂生したりしてでも、財産を増やすことや仕事の方を重要視する人は、二つの不治である。

B「衣食不能適,三不治也」
 衣食適する能わざるは、三の不治なり。
[意訳]季節や環境に適した衣服を着ることをしなかったり、食事の内容や方法に問題がある人は、三つの不治である。

C「陰陽併,臓気不定,四不治也」
 陰陽并せ、臓気定まらざるは、四の不治なり。
[意訳]陰陽の気が定まらず、併せて臓腑の気も安定しない人は、四つの不治である。

D「形羸不能服薬,五不治也」
 形つかれて薬を服する能わざるは、五の不治なり。
[意訳]肉体的に痩(や)せ衰え、薬を服用することさえできなくなった人は、五つの不治である。

E「信巫不信医,六不治也」
 巫女を信じ医を信ぜざるは、六の不治なり。
[意訳]占いや迷信を信じて、医者の言うことを信じない人は、六つの不治である。

「六不治」の後にはこう書かれています。
「有此一者,則重難治也」
 此れ一の者有るは、すなわち重くして治し難しなり。
[意訳]この一つでもあれば、状態が重く治すのが困難である。

 いかがですか。二千年以上を経ても、この六つのどれもが現代でもしっかり当てはまることに私は驚きました。意味の深いこの「六不治」という言葉は、もっと一般に普及してもいい言葉だなと思っております。
2018年05月04日
 どういう人が治りにくいのか?(1)

 日常診療をしていて、同じような治療をしていても、それに対しての反応度合いが人によってかなりの差があることを実感します。中にはどうしても症状が改善しにくい人もおられます。これには種々の要因があるのですが、特に心(ココロ)の問題で根深いものを抱えておられる人は、それが治癒を妨げていると考えられることが少なくありません。

 『心はなぜ腰痛を選ぶのか』(ジョン・E・サーノ著)という著書の中には、

 1. 幼少時に発生した感情は永遠に無意識下に留まり、一生の間に精神症状や身体症状となって現れることがある。

 2. 憤怒、悲嘆、恥辱など、苦痛を伴う、厄介で恐ろしい強烈な感情は無意識下に抑圧される。

 3. 抑圧された感情は常に意識に浮上しようとしている。つまり、無意識を抜け出し顕在化して、はっきり意識される状態になろうとする。

 4. 精神症状であれ身体症状であれ、その症状の目的は、心から身体へと注意をそらすことによって、抑圧された感情が意識上に浮上するのを妨げようとすることである。これは回避戦略である。

と重要ポイントがまとめて書いてあります。

 また無意識下の憤怒には3つの原因が考えられるとして、以下を挙げています。

 1.幼少時に発生し、今に至るまで発散されていないもの。

 2.自ら課すプレッシャーによるもの。強迫観念の強い人。完全主義者、善良主義者に多い。

 3.日常生活での実際のプレッシャーに対する反応。
 
 実際に私も診療をしていて、身体所見をみると、精神的ストレスを溜め込んでいるだろうなと思える人が多くおられますが、ご本人に聞いてみるとそれを自覚されていない人が少なくありません。

2018年04月27日
 東洋医学における診断と治療(弁証論治)(3)

 最後に、東洋医学における治療の原則(治則)と治療方法(治法)の概略だけお伝えしておきます。

 治療戦略としての治則には治病求本、標本緩急、扶正、袪邪、三因制宜などがあります。

 具体的な治療手段である治法には2つの概念があり、1つは湯液や鍼灸といった生体へのアプローチの違い、もう1つは、弁証に基づいた具体的な治療法です。たとえば熱証には冷やす治法の清法、塊を取り除くには消法…といったような考え方です。

 なお、「孫思邈(そんしばく)」と「王とう(おうとう)」は、鍼灸および湯液(漢方薬治療)を互いに組み合わせる総合療法が治効を高める、と主張しました。

「孫思邈」は、「湯液その内を攻め、鍼灸その外を攻むれば、則ち病の逃る所なし」といい残し、「王とう」は、「灸を知り、薬を知らば、固(もとよ)り良医と為す」といっています。ご参考までに。
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