よもやま話
2018年03月09日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(3)

 2.内傷の病因
 内傷の病因は人体自体に由来し、日常生活での不摂生や精神的・社会的要因が関与します。内傷の病因は、七情内傷・飲食不適・労倦内傷の3つにまとめられます。

1)七情内傷(しちじょうないしょう)
 七情は喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七種の情志活動を指し、喜・怒・悲・恐・驚など外界の刺激による情緒反応と、憂・思という思惟活動があります。

 七情は本来正常な情志活動であり、一定の範囲内であれば発病因子にはなりませんが、ある範囲を超えると発病因子に変化します。

 悲と憂、および驚と恐は性質が同じで因果関係にあるために同類とみなすこともできます。喜・怒・思・憂・恐を五志として、これらの太過(五志太過)は五臓を傷害します。つまり、ある感情の極端な偏りが、関わりのある臓を直接的に傷つけてしまうのです。

(1)喜と驚は心を傷つける 喜べば気緩み、驚けば気乱る

(2) 怒りは肝を傷つける 怒れば気上る

(3)思は脾を傷つける 思えば気結ぶ

(4) 悲しみや憂いは肺を傷つける 悲しめば気消え、憂えば気欝(こも)る

(5) 恐れは腎を傷つける 恐れると気が下がる

「怒は肝を傷つける。」とありますが、この「怒」は怒りの感情のみではなく、「弩」、「努」といった漢字にも通ずるように、心身の緊張をも含んでいます。本来男性に対して陰であり、ゆったり過ごす女性たちが、社会の荒波の中で日々心身を緊張させて過ごすことは、肝の臓を傷つけやすく、そのサインとして肩こりに苦しんでいることも多いのです。

 五志はバランスよくあるべきであり、現代人は喜が不足しています。喜は笑いが伴います。笑うことで健康になろう、という本もよく見かけますが、バランスを重視する東洋医学から見れば当然のことと言えます。衣食住が一定レベル以上にある日本においては、とくにこの七情の過不足が病因となる例は非常に多いものです。
2018年03月02日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(2)

 1. 外感の病因
 自然界の季節・気候の変化あるいは異常気候や環境がつくりだす病因。特徴は皮膚や口鼻から侵入して発病させることです。

 1) 六淫(りくいん)
 六淫とは風・寒・暑・湿・燥・熱(火)の六種の病邪の総称。本来これらは四季の正常な気候の変化を意味し「六気」と呼びますが、気候の変化が異常になって太過(多すぎ)あるいは不及(少なすぎ)が生じる結果として発病因子に変化した場合、これを六淫と呼ぶのです。

普段かかるカゼひき(風寒や風熱が多い)や、熱中症(暑熱)などがこの六淫によるものと考えていただければけっこうです。

 2) 疫癘(えきれい)(=流行病)
 疫癘というのは伝染病を引き起こす致病因素のことです。今でいうインフルエンザをはじめ、デング熱やエボラ出血熱といったものがこの類に属するといえるでしょう。
2018年02月23日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(1)

 病因とは、人体に疾病を引き起こす原因のことです。

 病の原因として、外から入ってくる、あるいは外界の気候の条件や各人の感情の偏り、またあるいは飲食や疲労、そして物理的な外傷、またこれらから引き起こされる体液の停滞や血液の停滞がさまざまな病態を生み出しうる、という話です。

 ・風・雨(湿)・寒・暑が体表を侵して発病に至った場合、これを外感病因といいます。

 ・飲食・喜怒等が内臓に影響して発病したときは、これを内傷病因といいます。

このように、中医学では常に疾病を外感病と内傷病の二つに大別します。要するに外界の影響を受けて発病するカゼひきやインフルエンザと、飮食の乱れやストレスからくる病の違いですね。

 病因学説は臨床の診断と治療の上に重要な価値を有しています。臨床上、原因のない疾病というものはありません。如何なる疾病もすべてなんらかの原因の影響と作用のもとで、病を得た身体が生み出す病態の反映なのであります。
2018年02月16日
 五蔵(4)

 肺(はい)

 肺は五行では「金」に属します。呼吸を通して「清らかな気」を体に取り入れる働きは、西洋医学でいう肺の機能と共通しますが、東洋医学ではそのほかに、体内の水液代謝に対しての作用なども担っています。肺の機能が異常になると、咳・痰や息切れ、喘息などの呼吸器症状のほかに、津液代謝とも関わっているので、尿量減少や浮腫(むくみ)などの症状も出やすくなります。

 腎(じん)

 腎は五行では「水」に属します。西洋医学的な排尿の働きを含んではいますが、それは一部の働きで、他にもっと重要な働きが多くあります。腎は、人の生長発育と生殖機能にかかわる非常に重要な生命力のもと(=腎精)と考えられています。したがって、性機能や排卵・月経などの周期的変化と関係が深いほか、骨の発育や維持、歯・毛髪などとも深い関係があります。
 
 腎は水液代謝の調節にも関わっています。その機能が低下すると、排尿の異常や夜間尿などの症状が現れます。また、脾や肺などの内臓がはたしている水液代謝方面での機能を促進する働きをも担っています。このようにして、腎は人体の水液代謝の過程の中で終始極めて重要な働きをしています。

 腎は納気作用といって気を納(おさ)める作用があるので、腎が弱ると息が吸いにくくなったりします。

 腎の陰陽は体全体の陰陽に影響を与えやすく、腎の異常によって陰陽失調による全身症状も現れます。

 さて、以上五臓の名称は西洋医学でもお馴染みですよね。ただし、上記の臓器の名称は本来日本東洋医学において設定された名称で、こちらが本家本元なのです。それが幕末に杉田玄白がオランダの医書「ターヘルアナトミア」を日本語訳する際に、解剖学的にみた臓器に東洋医学の五臓六腑の名称をあてはめたことにより、紛らわしくなっているのです。

2018年02月09日
 五蔵(3)

 脾(ひ)

 脾は五行の「土」に属します。脾は胃とともに、消化吸収に関する働きを担っていると考えられており、西洋医学の脾臓とはまったく考え方が違っています。

 脾の生理機能は運化と統血の二つの方面に包括されます。

 運化は、脾に飲食物を消化しその中の栄養物と水液を吸収し、心肺に輸送する働きがあることを指しています。脾の運化機能が異常をきたすと、消化吸収機能の減弱から腹が張るとか軟便がみられ、水液代謝の異常からは水湿停滞が発生し痰飲や水腫がみられます。脾の消化吸収機能は実質的には小腸と膵臓等の器官の消化吸収機能を概括したものといえます。

 統血は、脾が脈管中を流れる血液を統摂して脈外にあふれ出るのを防止する機能があることをいいます。脾が弱って統血機能が低下すれば、便血・子宮不正出血・皮下紫斑等の各種の出血症が引き起こされることになります。実際臨床的にみても、青あざ(青たん)が出来やすい女性は甘いものが好きで脾を傷めているケースが非常に多いものです。心当たりがありませんか?
2018年02月02日
 五蔵(2)

 (前回からの続きです)

 肝(かん) 

 女性の月経の周期や経量等が正常かどうかは肝の疏泄機能と深い関係があります。これは肝に関わる肝経が直接的に生殖器に関わる、ということと、下記の通り、血に深く関わる臓器であるからです。

肝気が順調に達し、血脈が流通していれば、月経は順調となります。肝気の流れが悪くなれば月経不調が発生し、乳房や下腹部が脹痛したりして、ついには月経痛・閉経・不妊などが発生します。

 次に、肝の蔵血機能は、肝が血液の貯蔵と血流量調節の生理機能を具えていることを指しています。肝の蔵血機能の異常は一般的には二つの方面の病変として現れます。

 一つには蔵血不足、即ち肝血不足です。肝血が少ないために人体の正常活動の需要をまかなうことができず、頭がふらつく・目がかすむ・手足に力がない等の症状が出現します。婦人では月経量少なくて経色も淡くあり、ひどくなると閉経等となって現れます。

 もう一つは肝が蔵血の機能を果たさないという場合で、このときは、吐血・鼻血など顔面部からの非外傷性出血・月経量の増加、子宮の不正出血等の多種の出血症が発生することがあります。
2018年01月26日
 五蔵(1)

 東洋医学における五臓について簡単に説明しておきます。

 心(しん)

 「心(の臓)」は五行では「火(か)」に属します。血液の運行を推進する機能を持つとともに、精神活動を概括しています。つまり、西洋医学でいえば脳の働きに関係する部分も「心(の臓)」の働きとしてとらえています。

 東洋医学的は「ココロ」とは脳ではなく、心の臓、すなわち胸の中にあると本当に考えています。脳はあえていうならば「データを蓄積し、分析するコンピュータのようなもの」と考えればよいでしょう。

 肝(かん)

 肝は五行では「木(もく)」に属します。その主な働きは「疏泄(そせつ)」機能と呼ばれるものにあり、西洋医学の考え方と大きく異なります。疏泄とは、気の流れをのびのびと行き渡らせる働きがあるということです。それにより、血液の流れと津液(しんえき)の代謝を促進します。

 肝の疏泄機能は、脾胃の消化に対し協力と援助の働きをしています。もし肝の疏泄機能に異常が起こると脾胃の消化機能に影響し気の運動が不調となります。また情志の異常な変化が生じて、主に抑うつと興奮の形で現れてきます。

肝気が抑うつすると、気分が悪くなり、しばしば愁(うれ)いよく塞ぎます。肝気が興奮するとイライラし容易に怒りだします。

 肝は蔵血の機能も有しています。

(次回に続く)


2018年01月19日
      気・血・津液と臓腑経絡

 臓腑経絡

 西洋医学はさまざまな機能を有する“部分”が集合することによって、一つの生命体を生命たらしめている、という考え方であるのに対し、東洋医学はまるごと一つとしての身体のうちに必要な機能や組織が存在する、という考え方です。

まるごと一つの身体のうちに、五臓という典型的な五行の働きを見出して身体全体の機能や組織を規定してゆく、という考え方なのです。そして五臓六腑を幹とし、経絡を枝葉として、両者は一体のものとして相互に影響を与え合っています。

 五臓には、肝、心、脾、肺、腎があり、六腑でできた栄養物質を貯蔵するところであり、六腑には、胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦があり、飲食物を運搬し、その運行中に消化吸収を行い、体内に必要となる清らかなものを残し、不要なものを二便(大便・小便)として排泄するために、清濁の選別をします。三焦は消化吸収、排泄の全ての機能に関係しています。

他に、奇恒の腑として、脳、髄、骨、脈、胆、女子胞(子宮)がありますが、詳細は割愛します。ここでは並列的に表記しましたが、あくまでも五臓が中心です。

 経絡は気血を運行させる通路であり、経脈と絡脈の総称です。

 経絡は十二経脈が主で、他には十二経別、十二経筋、十二皮部が含まれます。

これらは決して、西洋医学にいう血管や神経という概念とは一致するものではありません。あくまでも“狭義の気(営気)”が順行するルートであり、経筋はその気によって支配される筋肉系統、とご理解ください。

また経穴(ツボ)の多くは十二経脈に所属しており、鍼や灸を行う、ということはその経穴を通じて、経絡を調整し、その結果五臓六腑・気血のアンバランスを治す非常にすぐれた方法論といえましょう。
2018年01月12日
      気・血・津液と臓腑経絡

 気血津液(3)

 血(けつ)は、脈中を流れて栄養・滋潤作用を持つ赤色の液体のことです。必ずしも同じではありませんが、みなさんがイメージする血液に近いものと考えていただければよいでしょう。毛髪や爪、身体の柔軟性に“血”の健康状態があらわれます。

 体内の血が不足した状態を血虚(けっきょ)といい、毛髪のつやがなくなったり、抜け毛が多くなったり、爪が割れやすくなったり、目がかすんだりします。月経量も減少したり、月経不順になったりします。また、こむら返りなどもおこりやすくなります。

 また、血の流れが滞(とどこお)りやすくなった状態を血瘀(けつお)といい、月経痛などの痛みを生じやすくなります。

 なお、気滞になると血の循環が障害され、逆に血の循環が障害されると機能停滞をきたすので、よく気滞血瘀という両者が合併した状態が発生します。

 津液(しんえき)は、血液以外の体内の水分全般のことをいいます。皮膚・毛髪などを潤し、眼・鼻・口・舌なども潤します。さらに臓腑も潤して養うのです。津液が不足すると、上記の部位の乾燥の症状がみられます。

 津液の流れが悪くなったり汗や尿などとして排泄されるところで障害が発生すると、津液が停滞して異常な水液となり、それ自体が新たな病邪に変わってしまいます。その程度が軽いものを水湿といい、程度が進んだものを痰飲や水腫といいますが、はっきりとは区別しがたいところもあります。

 生命活動を維持する基礎物質として、他には精(せい)というのがあり、生命エネルギーの基本となる物質です。
 精には「先天の精」と「後天の精」があります。
2018年01月05日
      気・血・津液と臓腑経絡

 気血津液(2)

 (狭義の)気が不足した状態を気虚(ききょ)といい、いわばパワー不足の状態であり、疲れやすかったり、やる気が出なかったりといった症状が現れます。

 (狭義の)気の流れが滞(とどこお)りやすくなった状態を気滞(きたい)といい、精神的ストレスなどで生じやすく、胸やお腹が脹(は)って苦しい感じや脹った痛みなどの症状が出やすいです。他の部位でも同様の症状は出ますし、肩こりも気滞が関与していることが多いです。

 (狭義の)気は、体内を上昇したり下降したりして巡っているのですが、気滞という状態のなかで特に「下降すべき気が下りずに逆に上昇する」ことがあり、これを気逆(きぎゃく)と呼んでいます。

 最初に人体の広義の気、について述べましたとおり、広義の気をその機能や存在形態の違いからあえて狭義の気・血・津液に分けてお話ししております。そしてこの三者をとくに“動静”という観点から陰陽分類すると、狭義の気がもっとも陽であり、さまざまな“変化”を担当している、ということです。
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