よもやま話
2018年05月18日
 東洋医学からみた肩こり(1)

 これまで東洋医学についての基礎知識をざっくりと解説してきました。それを踏まえて、肩こりというものを東洋医学の視点からみればどうなのかをお伝えしていきます。肩こりも含め、そもそも運動器疾患(整形外科的疾患)は臓腑との関わりがあることが多いのです。

 では、肩こりの病因から考えましょう。

 病因としては、まず七情不和が多くみられます。とりわけ、「怒」の感情に由来するものが目立ちます。他には、飲食不節とそれに伴う痰飲や労逸(肉体過労、精神過労、長時間の同一姿勢)などが挙げられます。

 『顔の化学』には、「顔の形」は、遺伝的に決められている形から、その人が常時保っている精神と身体の状況による影響と、顔面骨格に作用する外力の影響により、意外に容易に変化するとし、その理由の一つとして習慣性の身体の使い方の偏りを指摘しています。

そして、習慣性の身体の使い方の偏りを主に三つ挙げています。まとめると、

 1.咀嚼習癖(片側噛みの癖):この習慣を治すには、意識して普段噛まない側の歯で噛む習慣をつけるのと同時に、ガムを使った咀嚼訓練を行うこと。

 2.睡眠姿勢習癖:だいたい右側か左側かどちらかを向いて、つまりどちらかを下にして眠る癖である。これも下になった側の顔面がつぶれ歯並びがゆがむ。ふせ寝では、頭・顎・歯列・脊椎に変形が及ぶ。

 3.口呼吸習癖:口呼吸は多くの疾患をもたらし、特に免疫疾患を引き起こすことがある。

 これらを東洋医学的にみれば、気の偏在(特に左右での気の偏在)から病が生じるといえます。この気の偏在から肩こりが生じてもおかしくないでしょう。したがって、習慣性の身体の使い方の偏りも、肩こりの病因として考えられます。
2018年05月11日
 どういう人が治りにくいのか?(2)

 中国春秋時代末期に伝説的な名医「扁鵲(へんじゃく)」がいたようですが、中国の歴史家「司馬遷(しばせん)」が編纂した中国の歴史書『史記』の中の『列伝』七十巻には『扁鵲倉公列伝』があります。ここに「六不治」という興味深い内容が記載されています。

@「驕恣不論於理,一不治也」
 驕恣(きょうし)理を論ぜざるは、一の不治なり。驕(おご)り高ぶって、道理を無視する人。
[意訳]はたから見れば問題があると思われることでも、自分が正しいと思い込み、医師や他人の忠告やアドバイスを聞き入れない人は、一つの不治である。

A「軽身重財,二不治也」
 身を軽くし財を重くすは、二の不治なり。
[意訳]自分の身体を大事にせずに酷使したり不摂生したりしてでも、財産を増やすことや仕事の方を重要視する人は、二つの不治である。

B「衣食不能適,三不治也」
 衣食適する能わざるは、三の不治なり。
[意訳]季節や環境に適した衣服を着ることをしなかったり、食事の内容や方法に問題がある人は、三つの不治である。

C「陰陽併,臓気不定,四不治也」
 陰陽并せ、臓気定まらざるは、四の不治なり。
[意訳]陰陽の気が定まらず、併せて臓腑の気も安定しない人は、四つの不治である。

D「形羸不能服薬,五不治也」
 形つかれて薬を服する能わざるは、五の不治なり。
[意訳]肉体的に痩(や)せ衰え、薬を服用することさえできなくなった人は、五つの不治である。

E「信巫不信医,六不治也」
 巫女を信じ医を信ぜざるは、六の不治なり。
[意訳]占いや迷信を信じて、医者の言うことを信じない人は、六つの不治である。

「六不治」の後にはこう書かれています。
「有此一者,則重難治也」
 此れ一の者有るは、すなわち重くして治し難しなり。
[意訳]この一つでもあれば、状態が重く治すのが困難である。

 いかがですか。二千年以上を経ても、この六つのどれもが現代でもしっかり当てはまることに私は驚きました。意味の深いこの「六不治」という言葉は、もっと一般に普及してもいい言葉だなと思っております。
2018年05月04日
 どういう人が治りにくいのか?(1)

 日常診療をしていて、同じような治療をしていても、それに対しての反応度合いが人によってかなりの差があることを実感します。中にはどうしても症状が改善しにくい人もおられます。これには種々の要因があるのですが、特に心(ココロ)の問題で根深いものを抱えておられる人は、それが治癒を妨げていると考えられることが少なくありません。

 『心はなぜ腰痛を選ぶのか』(ジョン・E・サーノ著)という著書の中には、

 1. 幼少時に発生した感情は永遠に無意識下に留まり、一生の間に精神症状や身体症状となって現れることがある。

 2. 憤怒、悲嘆、恥辱など、苦痛を伴う、厄介で恐ろしい強烈な感情は無意識下に抑圧される。

 3. 抑圧された感情は常に意識に浮上しようとしている。つまり、無意識を抜け出し顕在化して、はっきり意識される状態になろうとする。

 4. 精神症状であれ身体症状であれ、その症状の目的は、心から身体へと注意をそらすことによって、抑圧された感情が意識上に浮上するのを妨げようとすることである。これは回避戦略である。

と重要ポイントがまとめて書いてあります。

 また無意識下の憤怒には3つの原因が考えられるとして、以下を挙げています。

 1.幼少時に発生し、今に至るまで発散されていないもの。

 2.自ら課すプレッシャーによるもの。強迫観念の強い人。完全主義者、善良主義者に多い。

 3.日常生活での実際のプレッシャーに対する反応。
 
 実際に私も診療をしていて、身体所見をみると、精神的ストレスを溜め込んでいるだろうなと思える人が多くおられますが、ご本人に聞いてみるとそれを自覚されていない人が少なくありません。

2018年04月27日
 東洋医学における診断と治療(弁証論治)(3)

 最後に、東洋医学における治療の原則(治則)と治療方法(治法)の概略だけお伝えしておきます。

 治療戦略としての治則には治病求本、標本緩急、扶正、袪邪、三因制宜などがあります。

 具体的な治療手段である治法には2つの概念があり、1つは湯液や鍼灸といった生体へのアプローチの違い、もう1つは、弁証に基づいた具体的な治療法です。たとえば熱証には冷やす治法の清法、塊を取り除くには消法…といったような考え方です。

 なお、「孫思邈(そんしばく)」と「王とう(おうとう)」は、鍼灸および湯液(漢方薬治療)を互いに組み合わせる総合療法が治効を高める、と主張しました。

「孫思邈」は、「湯液その内を攻め、鍼灸その外を攻むれば、則ち病の逃る所なし」といい残し、「王とう」は、「灸を知り、薬を知らば、固(もとよ)り良医と為す」といっています。ご参考までに。
2018年04月20日
 東洋医学における診断と治療(弁証論治)(2)

 四診が済めば、次は弁証です。

 弁証とは、証を弁(わきま)えること。

 主な弁証方法として、八綱弁証(表裏寒熱虚実陰陽)、気血津液弁証、臓腑経絡弁証などが主となります。

 また、風邪やウィルス感染症などに対しては、外感熱病弁証(六淫の外邪、疫癘(えきれい)の邪を感受することによって起きる熱病に対する弁証)として、六経弁証、衛気営血弁証があります。

 以上の各弁証を総合して、各患者さんごとの「証」を決定していきます。それと同時に、各弁証内容と問診情報を照らし合わせて、その人の病因(病の発生原因)と病機(疾病の発展変化のしくみ)を考えます。この証と病因病機から治療方針を決定していくのです。この過程をまとめて、弁証論治(べんしょうろんち)(=証を弁えて治を論ずる)といいます。

 以上が、東洋医学における診断から治療までに流れになります。イメージは伝わりましたでしょうか。要するに医師側の五感を働かせて情報収集(四診)を行い、得られた情報に基づいて必要なモノサシでそれらを評価し(各種の弁証)、その評価に対して適切な対処法を模索・決定する(論治)、ということです。
2018年04月13日
 東洋医学における診断と治療(弁証論治)(1)

 以上の気血津液、臓腑経絡の話を踏まえて、では実際に東洋医学ではどうやって診断を行い、どういう治療を行うのかについて、その概略をお話いたします。

 まず、診断においての基本となるのが、「四診合参(ししんがっさん)」です。四診とは、望診、聞診、問診、切診の4種類のことで、それぞれの診察から得た情報をまとめて総合的に診断することを合算といいます。

 では、それぞれについて簡単に説明します。

 望診(ぼうしん)とは、視覚によって全身および局所を観察することです。内容は神色形態、皮膚、望舌(舌診)があります。

 聞診(ぶんしん)とは、患者さんの声の聴取と臭いを嗅(か)ぐという二つの内容があります。

 問診(もんしん)とは、患者さんの主訴(主に治したい症状など)、現況(現在の生活状況など)、家族歴、既往歴、現病歴などを問うことです。具体的内容は一般事項(主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活習慣)と、主訴の緩解・増悪因子、その他の症状、飲食、睡眠、排泄物(二便、汗、痰など)、月経状態などを問います。
 
 私どものクリニックでは初診時に丁寧に問診させていただいています。

 切診(せっしん)とは、患者さんの身体に触れることにより病状を知る方法です。主に中国では脈診を以て切診とすることが多いですが、本邦においては脈診のみならず腹診、背診、切経(経絡を手でなぞって虚実などを評価する)などを行うこともあります。
2018年04月06日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病機

 病機とは疾病の発生と発展変化のしくみを指し、また“病理”ともいっています。臨床上、診断と治療の拠り所となるものです。先に述べた臓腑や気血、経絡などがどのようなアンバランス状態にあるのか?ということを知ることができるのです。

 複雑な疾病の発生も、正気虚弱と邪気の侵犯の二つの要因の関係にまとめることができます。正気と邪気・・つまりは、正常な機能やその物質的基礎(気や血)が“邪気”というものに対して表現されるときに、あるいはそれらが邪気に対して防衛的機能を発する時に『正気』と表現し、その正気を逼迫(ひっぱく)する六淫や七情の過不足から引き起こされる気滞、痰飲、瘀血などが『邪気』と表現されるのです。

 病の発生においては、正気が充実しておれば邪気は病変を引き起こすことはなく、正気に不足があってはじめて邪気が乗じることができるのです。

 実証とは、邪実が主体の病変です。

 虚証は、正気の不足(正気虚)が主な病態であり、気・血・津液・精などの不足を意味します。

 おおざっぱにいえば、活動するためのエネルギーが不足したものが正気の虚であり、エネルギーが体内をめぐるのを阻害するのが邪気(邪実)です。ある病態において、正気虚、邪気実のいずれが主体なのか、ということを知る概念だということです。


2018年03月30日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(6)

 3.その他の病因

1) 痰飲(たんいん)
 痰飲とは水液代謝の障害により形成された病理変化と病理産物であるとともに、それ自体が病因となるものです。病理産物としては、一般的に、粘稠で濁ったものが痰、稀く透明なものが飲と考えられています。

喉に絡んだ、あるいは喀出される痰だけが痰、というわけではないのです。血以外の体液の停滞すべてを認識しております。たとえばガングリオンや浮腫み、といったものも痰飲として捉えて治療いたします。
 
2) 瘀血(おけつ)
 瘀血とは体内血液の停滞を指し、経脈を離れた血液が体内に停留した結果としての病理産物であり、同時にそれにより血液の流れが滞り臓腑経絡が阻害されるという病因にもなります。

とくに“血を以て本となす”女性にとってはかかわりの深い病理産物であり、働く女性が過緊張によって肝気の鬱結(うっけつ)を起こして気滞を生じ、その結果気滞が血を瘀滞させ、結果瘀血の停滞を生み、ひどい肩こり、あるいは子宮筋腫、子宮内膜症などの婦人科疾患を患うケースは非常に多いものです。普段から肩こり知らずの毎日を送り、心身の緊張をため込まないことが大切ですね。

2018年03月23日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(5)

2.内傷の病因

3)労倦内傷(ろうけんないしょう)
(1) 過労
・労力の使い過ぎ
・精神の使い過ぎ
・房事過多
の三つの意味を含んでいます。労力過度は人体の精気を消耗させます。

・精神の使い過ぎ
 長い間、頭脳を使い過ぎると気力・精神虚弱、陰陽失調をきたし、病となります。心・肝・脾の臓に影響が及び、動悸・・不眠多夢・頭がふらつく・イライラし怒りやすい・食欲不振などが出現します。

・房事過多
 過度の性生活は腎を傷つけます。
(a)腰酸膝軟(腰が重だるく膝がふらふらする)
(b)頭がふらつき耳鳴りする
(c)性機能減退、男性では遺精(性交によらないで射精の起こる現象)、インポテンツ、女性では白帯下などが出現します。

(2) 過逸
これは身体をあまり動かさないことを言います。このような状態を続けていると心臓の機能は衰え、脾胃の働きも停滞し、気血のめぐりが悪くなったり、あるいは脂肪が体内に蓄積しやすくなります。

私どものクリニックでは過度の安閑にある方に対しては積極的に行動することをお勧めしております。
2018年03月16日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(4)

 2.内傷の病因

 2)飲食不適
 飲食不適というのは、暴飲暴食したり逆に食べなかったり、また不潔なものを食べたり、偏食が過ぎる等の不適当な食生活をいい、これらのことが疾病の発生原因になることから、内傷病の主要な致病因素の一つとしています。

 飲食物は主に脾胃の消化吸収に依存するので、飲食不適はまず脾胃を損傷して、種々の病変を生み出します。食べ過ぎや暴飲暴食を続けていると、脾胃の消化吸収能力の限界を超えることになり、飲食停滞を惹起し、脾胃を損傷させてしまいます。

その結果、湿が集まり、痰が生じ、ついで喉に痰が絡んで咳が出たりします。飲食による病証は割合に複雑となります。偏食もやはり問題です。人体が必要とする栄養は多岐にわたっているので、食生活については日常から多様な栄養素を取り込むよう注意を払う必要があります。

 また、飲食物には寒涼熱温の性質があるので、もし特別に寒または熱に片寄った食物ばかりを好んで食べておれば、人体の陰陽バランスが崩れ何等かの疾病が発生します。

例えば冷たいものを食べ過ぎると、脾胃の陽気が損傷され、体内に寒湿の邪が生じて、腹痛や下痢が発生します。

油で炒めた熱いものを特に多く食べていると、脾胃の陰液が損傷され、腸胃に熱が積もって、口渇・口臭・便秘等が発生します。

このように、飲食は必ず寒熱の調和をはかり、好き嫌いに任せた偏食を慎まねばなりません。

 さらに五味の偏食にも要注意です。五味と五臓には一定の相性があります。

・酸(すっぱい)は肝に入り、
・苦は心に入り、
・甘は脾に入り、
・辛は肺に入り、
・鹹(しおからい)は腎に入ります。

もしも長期にわたり五味の摂り方がアンバランスだと、五臓の機能に偏盛偏衰をきたしたりして疾病を発生させることになります。

 いずれにせよ、飮食不適によって病んで来院される患者さんが多くみられます。ただ、おそらく100年前と異なるのは、食品が豊富でありすぎるがゆえの飽食、栄養過多があまりに多いことです。ものの無かった時代に栄養不良という意味での飮食不適で多くの方々が命を失った時代に比して、現代人はなんと恵まれていることでしょうか。肝に銘じなければならないと思います。
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