よもやま話
2018年07月20日
 呼吸、姿勢、運動について(4)

 次に姿勢についてお話しましょう。

 日常生活の大半は、座位あるいは立位(歩行も含めて)になると思います。いずれにしても、上半身の姿勢のあり方は共通したものがあります。

 この理想的な姿勢を考える上で、非常に役に立つものがあります。それは、伝統武術における姿勢です。中国内家拳のひとつである太極拳には、いくつかの姿勢の要諦(ようてい)と呼ばれるものがあります。肩こり解消のヒントもここにあります。これらを紹介していきます。

 「沈肩墜肘(ちんけんついちゅう)」
 頚から肩にかけての筋肉(僧帽筋など)の緊張をゆるめて肩や肘が自然に下りるようにします。

 「含胸抜背(がんきょうばっぱい)」
 これは水平面(地面と平行の面)上での話と考えてください。平たくいえば、胸を反(そ)らせすぎず、また逆に丸め過ぎず、その中間のリラックスした自然体ということです。

 → ちなみにこれらは普段の動作においても意識をすれば有用です。背中を通ってきた気を手先までスムースに通しやすくなります。これは整形外科的にいえば、肩の深層部にあるインナーマッスルがしっかり効いて安定するゼロポジションに近づける動作ともいえ、肩周囲の筋肉などに無理な負担がかかりにくくなります。

*ゼロポジション:肩甲骨の棘突起と上腕骨の長軸が同一方向になるポジショニングのこと。

 「立身中正(りっしんちゅうせい)」
 簡単にいえば、上半身が地面と垂直になるように、すっと真っ直ぐ立つことです。横から見たときに、胴体に対して頭が拳ひとつくらい前に出ている人をよく見かけます。日頃から後頭部を軽く後ろに引く意識を持ってみてください。但し脊椎(いわゆる背骨)の形状には個人差があります。痛みや過度な筋緊張を伴うようでは逆効果ですので、無理はせずに可能な範囲でいいので、心がけてみましょう。

姿勢の要諦には他にも腰や仙骨に関するものなどもありますが、ここでは割愛させていただきます。

 (次回に続く)
2018年07月13日
 呼吸、姿勢、運動について(3)

 以上、3種類の呼吸法を挙げましたが、この中で特に重要視したいのが逆腹式呼吸です。

 気功法や武道においても特に大事な呼吸法ですが、この呼吸法を習得して実践することで、いわゆる丹田が充実していきます。体内の気の動きには、昇降と出入がありますが、気の上昇の力に比べて下降の力が弱い人が、現代人には圧倒的に多くみられます。この逆腹式呼吸を行うことで、気の下降の力をつけることができるのです。ぜひ、実践してみてください。

 なお、呼吸法を行うにおいては、口唇(くちびる)は閉じて、上口蓋(口腔内で、上の歯茎より少し奥の部位)に舌先の表面が軽く接触するようにしてください。そうして鼻呼吸を行うことで、体内に充実した気が漏れずに巡りやすくなります。

 また、特に慣れていない人が逆腹式呼吸をすると、かえって疲れてしまうこともありますので、はじめは5回から10回前後までにしておいて、その後はゆったりと自然な腹式呼吸を行えばよいでしょう。
 
 呼吸については、『太極拳と呼吸の科学』(楊進,雨宮隆太,橋逸郎著)にわかりやすく書いてありますので、参照してみてください。

 (次回に続く)
2018年07月06日
 呼吸、姿勢、運動について(2)

 胸式呼吸は、胸郭の拡大・縮小を中心とした呼吸です。息を吸ったとき、胸郭全体がやや上に持ち上がりながら拡大し、息を吐いたとき、胸郭は縮小して下に降ります。

 腹式呼吸は、息を吸うときに腹を膨らませ、息を吐くときに腹をへこませます。腹式呼吸は胸郭の拡大・縮小はあまりなく、横隔膜の上下動を主体とする呼吸です。
 
 逆腹式呼吸は、腹式呼吸とは反対に、息を吸うときに腹(上腹部)をへこませ、息を吐くときに腹(下腹部)を膨らませる呼吸です。

 逆腹式呼吸で息を吸うときは主に下部胸郭が拡大する胸式呼吸で行われます。息を吐くときは、上腹部をわずかにへこませて下腹部(丹田)を膨らませて力を入れます。

 逆腹式呼吸はその見かけ上の動きから腹式の名が含まれていますが、その機能面から考えると、胸式呼吸と腹式呼吸の中間に位置するといえます。

 武道の書物などで、「逆腹式呼吸は息を吸うときに横隔膜が上昇し、息を吐くときに横隔膜は下降する」との記載を見たことがありますが、これは間違っています。いずれの呼吸法であれ、医学的には横隔膜は息を吸うときには下降し、息を吐くときには上昇します。誤解のないようにしてください。

 (次回に続く)
2018年06月29日
 呼吸、姿勢、運動について(1)

 現代人の呼吸は浅く乱れています。科学の進歩に伴いさまざまなことが便利で効率的に行えるようになってきてますが、それで現代人のストレスが減るわけでもなく、むしろ逆にそれに振り回されるように多忙になっているように思えます。生活のリズムや行動様式が昔に比べてスピード化し、気忙しくなっています。

 そういったことが現代人の呼吸の乱れの大きな要因といえます。この呼吸の乱れは心身に悪い影響を及ぼします。ですから、意識的にゆっくり呼吸をする時間をつくり、正しい呼吸法を行い、自然界の清気を体内に取り込みましょう。
 
 呼吸は横隔膜と肋間筋などの働きによる運動です。そう、呼吸もれっきとした運動なのです。呼吸を大別すると、胸式呼吸、腹式呼吸、逆複式呼吸に分けられます。それぞれを簡単に説明しましょう。

 (次回に続く)
2018年06月22日
 養生法とは(3)

 このように、その季節に適した過ごし方をしないと、そのあとの季節の体調にまで影響を及ぼしてしまうということです。

 例えば、若い女性が冬でも短いスカートをはいていたりしますが、こんなことをしてると、体内の陽気が損なわれて、春になっても足の冷えが残るだけでなく、腰痛、月経痛、月経不順などがおこることもあるので気をつけてほしいものです。

 夏は自然界の陽気をたくさん浴びて、しっかり汗もかいて発散することが必要です。もちろん、紫外線対策をして脱水や日射病には気をつけなければいけませんが、ひと夏中、冷房の効いた部屋にばかりいて過ごすのは先ほどの理由からもよくありません。
 
 以上のように、養生法は大切ではありますが、あまり窮屈に考えないようにしてください。そうしなければいけないというふうに思うと、そのこと自体が精神的ストレスになり兼ねませんので。ただ知っておくだけでも意味はあると思います。あなたの生活状況に合わせて、無理なく改善できるところがあれば実践していただければよいでしょう。
2018年06月15日
 養生法とは(2)

 (以下、『意釈黄帝内経素問』(小曽戸丈夫,浜田善利共著)より抜粋)

 『 秋の三か月間を、容平(ようへい)という。(中略)この時にあっては、早く寝て早く起きることが、ちょうど鶏の寝起きのようであるべきだ。志を安らかにして、(中略)。

 (中略)もしこの養生法に従わず、むやみに精神を動揺させたり、あるいは秋の冷えにあたりながら過労したりすると、秋に盛んに活動している肺の臓が傷害されて病となる。たとえすぐには発病しなくても、冬がくると、これが因となって下痢をおこす病となる。それは秋にうけた傷害が元になって、冬の蟄蔵(ちつぞう)の気力が減少する結果、病が表面に出てくることになるのだ。』

*蟄蔵(ちつぞう):潜伏して閉蔵する。

 『 冬の三か月間を、閉蔵(へいぞう)という。(中略)この時にあっては、夜は早く寝、朝は遅くまで床にあって日が昇ってから起き、寒気に損なわれないようにしなければならない。(中略)肉体的には直に寒さにふれぬように、また、体を温かく保つように注意し、(中略)。

 (中略)この養生法に逆らって精神を忙しく動揺させたり、寒にふれたり、過労して発汗し陽気をたびたび逃したりすると、冬の主役である腎の臓が傷害されて発病する。たとえすぐに発病しなくても、春になるとこれが原因となって、手足が萎えて冷える痿厥(いけつ)という病になる。それは冬にうけた傷害が元になって、春の発生の気力が減少した結果、病が表面に出てくるのだ。』

 (次回に続く)
2018年06月08日
 養生法とは(1)

 東洋医学の中には古来より培われた養生法があります。養生法とは、健康を維持・管理して長寿を全うするための方法についての総称です。具体的には、心の持ち方や、飲食、睡眠、運動、衣服など、日常生活全般にわたっての内容が含まれます。いずれも自然の摂理に合ったものですから、私たちも可能な範囲で取り入れて実践していきましょう。

 『素問・四季調神大論』に、私たち現代人にも参考になる四季に応じた過ごし方が書いてあります。(以下、『意釈黄帝内経素問』(小曽戸丈夫,浜田善利共著)より抜粋)

 『 春の三か月間を、発陳(はっちん)という。(中略)この時にあっては、人々は夜ふかしすることなく早く床に入り、朝は早く起き出てゆるやかに庭を歩くようにする。(中略)この養生法に逆らって心を緊張させたり、急激な労働をしたりすると、春に盛んに活動する肝の臓が傷害されて病となる。たとえすぐに発病しなくても、夏がくるとこれが原因となって、夏でも寒がる病となる。即ち、春にうけた傷害が元になって夏の万物成長の気力が減少してくる結果、病が表面に出てくるのだ。』

 『 夏の三か月間を、蕃秀(ばんしゅう)という。(中略)この時にあっては、人びとは夜は夜ふかしすることなく、朝は早く起床し、日の長いのに倦(う)むことがないようにする。(中略)この養生法に逆らって心をうつうつさせたり、身体に鬱熱(うつねつ)させたりすると、夏に盛んに活動する心の臓が傷害されて病となる。たとえすぐに発病しなくても、秋がくるとこれが原因となり、おこりとなる。即ち夏にうけた傷害が元になって秋の収斂(しゅうれん)の気力が減少する結果、病が表面に出てくるのだ。』

*おこり:間欠的に発熱し、悪感(おかん)や震えを発する病気。

 (次回に続く)
2018年06月01日
 東洋医学からみた肩こり(3)

 臓腑経絡の観点からみれば、臓腑から経絡を通して体表の項背部に至るまで、このルートの中のどこかで問題が生じれば、肩こりが生じうるということです。このうち、体表面に近い経絡経筋の問題である場合(例えば、同一姿勢の持続や特定の筋肉の酷使による場合)は、いわば局所(項背部)に対するアプローチで改善が見込めます。例えば、マッサージなどで改善する場合がこれに当たります。

 しかし、臓腑病から経絡に伝播した肩こりや臓腑病そのものによって生じる肩こりの場合には、局部(項背部)に対するアプローチだけでは当然根本解決にならないわけです。仮にマッサージなど局所的にほぐしてその時は楽になっても、根本が治ったわけではないので、再び肩が凝ってきます。その根本原因に対するアプローチが必要となるのです。

 もうひとつ、外因によるものとして、いわゆる風邪をひいたときに、体表面で外邪と正気が戦うことにより、項背部が緊張して生じる肩こりもあります。こういった場合には、例えば葛根湯を飲めば適度に発汗して外邪も追い出すことができて、項背部のこりも消失します。

 以上のように、肩こりの病機(病のしくみ)を主に気血津液、臓腑経絡の観点から紹介しました。そして、体内に生じているその問題点を解決するために有効な養生法をこの後、述べていきます。これらの養生法を実践していくことで、あなたの肩こりは解消されていくはずです。

しかし、中には諸事情で養生法まではなかなかうまく実践できないという人、もっと早く何とかならないかという人もおられるでしょう。そういった人たちには、湯液治療(漢方薬)や鍼灸治療が有効であります。先ほど示したようにその人の病因病機が把握できれば、それぞれに応じた治療ができるわけです。養生法と組み合わせればなお良い結果が得られるでしょう。
2018年05月25日
 東洋医学からみた肩こり(2)

 次に病機(病のしくみ)として、気血津液の観点からみれば、頚部は多数の経絡・経筋が流注しているので、気血(津液)が集約してその上下左右の流れが複雑に交錯する部位といえます。ですから、どこかに流れを乱す要因が生じれば、他の部位より容易に流れの滞りを起こします。

 高速道路で多くの車線が一気に合流する場所では交通渋滞が起こりやすいですよね。人体では、広い背中から幅の狭い頚部に気血の流れが集約してくるわけですから、同様に滞りやすいことはイメージしやすいかと思います。

 また、肩こりのおこる項背部というのは、腹部に対して陽位に属し、体の上部でもあるので下部に対しても陽位に属します。ですから、体内に気滞が生じた場合、その余った気(邪気)は陽に属し、陽である体の上部に集約していくために、項頚部でその流れが滞りやすいと考えられます。

 正気と邪気の状態という観点からみれば、血虚や腎虚などの正気の弱りの状態のときにも、相対的に邪気が旺盛となって流れが滞り、肩こりが生じやすくなるといえます。

2018年05月18日
 東洋医学からみた肩こり(1)

 これまで東洋医学についての基礎知識をざっくりと解説してきました。それを踏まえて、肩こりというものを東洋医学の視点からみればどうなのかをお伝えしていきます。肩こりも含め、そもそも運動器疾患(整形外科的疾患)は臓腑との関わりがあることが多いのです。

 では、肩こりの病因から考えましょう。

 病因としては、まず七情不和が多くみられます。とりわけ、「怒」の感情に由来するものが目立ちます。他には、飲食不節とそれに伴う痰飲や労逸(肉体過労、精神過労、長時間の同一姿勢)などが挙げられます。

 『顔の化学』には、「顔の形」は、遺伝的に決められている形から、その人が常時保っている精神と身体の状況による影響と、顔面骨格に作用する外力の影響により、意外に容易に変化するとし、その理由の一つとして習慣性の身体の使い方の偏りを指摘しています。

そして、習慣性の身体の使い方の偏りを主に三つ挙げています。まとめると、

 1.咀嚼習癖(片側噛みの癖):この習慣を治すには、意識して普段噛まない側の歯で噛む習慣をつけるのと同時に、ガムを使った咀嚼訓練を行うこと。

 2.睡眠姿勢習癖:だいたい右側か左側かどちらかを向いて、つまりどちらかを下にして眠る癖である。これも下になった側の顔面がつぶれ歯並びがゆがむ。ふせ寝では、頭・顎・歯列・脊椎に変形が及ぶ。

 3.口呼吸習癖:口呼吸は多くの疾患をもたらし、特に免疫疾患を引き起こすことがある。

 これらを東洋医学的にみれば、気の偏在(特に左右での気の偏在)から病が生じるといえます。この気の偏在から肩こりが生じてもおかしくないでしょう。したがって、習慣性の身体の使い方の偏りも、肩こりの病因として考えられます。
よもやま話TOP ]  [ 1 ]  [ 2 ]  [ 3 ]  [ 4 ]  [ 5 ]  [ 6 ] 

ご予約・お問い合わせ TEL.06-4709-7400 診察時間 月曜日・火曜日9:30〜11:00/16:30〜19:00 水曜日・金曜日9:00〜12:00/13:00〜16:00

お知らせ